ダイカスト合金
ダイカスト用合金としてJISに規定されている合金は、アルミニウム合金、亜鉛合金、マグネシウム合金の3種類があります。そのほかにも銅合金や鉛合金もあるがこれらはJISで規定されていません。ダイカストで最も多く使用されるのがアルミニウム合金で、次いで亜鉛合金となっています。
■ダイカスト用合金には次のような特性が求められます。
- 1.鋳造性が良いこと
- 金型内での溶湯の流動性が良い。複雑で精密な金型形状や、薄肉製品の製造が可能となる。
- 2.凝固時の欠陥発生がないこと
- 熱間割れがなく、強度特性のバラツキが少ないこと。
- 3.金型へのダメージが少ないこと
- 鋳造温度が低く金型への侵食が少ないこと。金型寿命は合金の融点が高くなると極端に低下する。
■アルミニウム合金種
ダイカストの中で使用されるアルミニウム合金はJISにより14種類に規定されています。
その中で最も使用されるのが「ADC12種」と呼ばれる合金でダイカスト合金使用量の90%以上になります。
東和で取り扱っている合金もこのADC12種です。
合金の選択にあたっては、化学成分、機械的性質、物理的性質、鋳造性、機械加工性、表面処理性を考慮する必要があります。
JIS合金種 | 合金成分系統 | 合金特性 |
---|---|---|
ADC10 | Al-Si | 機械的性質、被切削性、鋳造性が良い。 |
ADC10Z | Al-Si-Cu | 10種とほぼ同じ。 鋳造性、耐食性で若干劣る。 |
ADC12 | Al-Si-Cu | 機械的性質、被切削性、鋳造性が良い。 |
ADC12Z | Al-Si-Cu | 12種とほぼ同じ。 鋳造性、耐食性で若干劣る。 |
ADC1 | Al-Si | 耐食性、鋳造性に優れるが耐力が幾分低い。 |
ADC3 | Al-Si-Mg | 衝撃、耐力に優れ耐食性も1種とほぼ同じ。 鋳造性も劣る。 |
ADC5 | Al-Mg | 耐食性が最も優れ、伸び、衝撃に強い。 鋳造性も劣る。 |
ADC6 | Al-Mg | 耐食性は5種に次いで優れる。 鋳造性は5種よりも若干良い。 |
ADC14 | Al-Si-Cu | 耐磨耗性に優れ耐力はよいが伸びが劣る。 鋳造性も劣る。 |
■合金添加物
ダイカスト用アルミニウム合金には鋳造性や強度、耐食性などの改善を目的として、合金元素を添加しています。
合金元素には性能を向上させる働きと反対に低下させる働きがあり、規格により厳しく管理されています。
取扱いには注意が必要です。
合金元素 | 増加する 性質 |
低下する 性質 |
特長 |
---|---|---|---|
Si(珪素) | 強度 硬さ |
伸び | Al-Si系合金は鋳造性や強度特性に優れる。 |
Cu(銅) | 引っ張り強さ 硬さ 切削性 |
伸び 耐食性 |
ADC12種ではCuを増加傾向にして機械的性質を向上させている。 |
Fe(鉄) | 焼付き防止 かじり防止 |
強度 | 過剰なFe添加は強度を低下させる。 |
Mg (マグネシウム) |
耐食性 強度 |
耐食性 | 過剰なMg添加は耐食性を低下させる。 |
Mn(マンガン) | 切削性 | Al-Si-Fe-Mnの金属間化合物を生成し切削性を低下させる。 | |
Zn(鉛) | 耐食性 | 不純物として許容範囲が厳しく制限されている。 |
■アルミニウム合金
アルミニウムは天然鉱物ではなく、ボーキサイトと呼ばれる原料から精錬して作られます。世界でアルミニウムの発見研究が始まったのが1800年初頭からで金属の中では非常に歴史が浅い新素材です。1800年後期になり日本で初めてアルミニウムが製品化されました。発見から今日までの200年あまりで急速に普及しました。
特長 | 解説 |
---|---|
軽い | アルミの比重2.7は、鉄7.8、銅11.3、銀10.0、金19.0と比べ非常に軽いことがわかります。 自動車産業ではアルミニウム合金が多く使用されています。理由の一つとして、軽量にして低燃費に貢献することが上げられます。自動車以外にも、飛行機や電車のボディなどもアルミ製です。 |
リサイクル | アルミは溶け出す温度が660℃と低く、少ないエネルギーで溶かすことができます。再生地金を作るエネルギーは、ボーキサイトから作る新地金のエネルギーのわずか3%で作ることができます。なんと97%のエネルギー節約になります。 またリサイクルというと品質が落ちる印象がありますが、同じ合金を集めて溶かすことで同じ品質のアルミニウムになります。アルミニウムはリサイクルが主原料と言えます。 |
強い | アルミのイメージは、『やわらかい』と思われがちですが、アルミは熱処理を施すと強度が増し、なかには鉄に匹敵するものもあります。さらに低温で強度を増す特性を持ち、-196℃の液体を入れても壊れません。この特性により宇宙分野やバイオテクノロジー分野でも活躍しています。 |
耐食性 | アルミニウムは空気中で酸化しやすい性質があります。酸化することで酸化アルミニウム皮膜が形成されます。この皮膜によって腐食を防ぐ作用が持続され、いつまでも美しい外観を保ちます。 |
電気を通す | アルミニウムは電気を通し、高い電気伝導性を持っています。 軽量で電気をよく通すので、最近は高圧電線を銅線からアルミニウム線に替えているそうです。 |
非磁性 | アルミニウムは非磁性で磁場に影響されません。そのためパソコンのハードディスクやパラボラアンテナなどに使われます。非磁性とは磁石に付かないことで、空き缶の選別は磁石を用いて分別しています。 |
毒性がない | アルミニウムは無害な金属です。焼いても煮ても毒が出ません。キッチンにあるアルミホイルやジュースの缶、やかんなど、口にするものでも問題ありません。薬やお菓子の包装にも多く使われています。 |
美しさ | アルミニウムは建築材料にも多く使用されています。それは耐食性だけでなく、その無機質な美しさがデザイナーの心を揺さぶるからでしょう。アルミニウムが世界に紹介された頃、『銀よりも美しい』なんて言われてたそうです。 |